菩提樹物語


お釈迦様は、長い苦行の末、一本の木の下に静かに座し、真の悟りすなわち、(bodhi)ボデイ=”菩提”を開き仏陀(ブッダ)となられたとされています。
その木がインドボダイジュだったのです。
瞑想に座す仏陀の耳にもインド菩提樹の葉のさやぎは安らかに響いたことでしょう。


覚樹<カクジュ>とも道場樹ともよばれています。サンスクリット語で、pippalaとかasvatthaと呼ばれる樹木のことをさします。
学名はFicus religiosaとよび、クワ科の植物。日本の寺院に植えられている菩提樹やドイツの菩提樹(Lindenbaum)は、
葉の形がこれに似たシナノキ科の植物。

インド菩提樹
原産地 : インド 
菩提樹
原産地 : 中国


インドのビハ-ル州にあるブッダガヤーには、ブッダが瞑想に座ったとされるその場所に今でもインド菩提樹の木が茂っている。
元の木は枯れて何度か植え替えられ、現在の木は、1885年に植え替えられたものだそうです。
釈迦誕生のムユウジュ(無憂樹)、入滅のサラの木(沙羅の木)とともに、インドボダイジュは、悟りの木として仏教の三大聖樹とされている。

先のものが後に後のものが先に?

インド原産のクワ科イチジク属のインドボダイジュが本来は「菩提樹」呼ばれるべきだったのです。
が、しかし、今、菩提樹としてわが国にもたらされ先にその「菩提樹」の名の栄誉を与えられたのは、中国産のシナノキ科の木でした。
この中国産のボダイジュは、六条天皇のころ、宋に修行に渡った建仁寺の僧、栄西(臨済宗開祖)がその種子を持ち帰り、
寺の庭などに植えたのが広まったものと言われています。
今となっては、本物の菩提樹は、インドボダイジュという和名に甘んじるしかなくなってしまいました。

仏蹟巡礼の地、ブッダガヤーでは、菩提樹の数珠というのを売っています。
この菩提樹というのがまたまぎらわしくて、これもインド菩提樹の種子ではなくインドジュズノキなどの種子と思われます。
直しの現場によく、インドのお土産だからと、ブッダガヤなどで買ってこられた素朴な数珠を持ち込まれます。
それが、インドジュズノキの種子(金剛珠)です。

インドボダイジュは、イチジク属で、袋状に発達した花托の中に小さな花がつく。種子も小粒でとうてい数珠にできるような代物ではありません。
菩提樹の数珠として売られているものは、インドジュズノキとかジュズボダイジュとよばれるホルトノキ科の木の種子です。

あまりに有名になると、その名にあやかって偽物が出回るのは、植物の世界でも同じなのだろうか?
インドボダイジュは仏教だけでなく、ヒンズー教でも聖木として崇められてきました。
その根には創造の神ブラフマーが、幹には破壊と再生の神シバ神が枝には、維持の神ビシュヌ神住むと考えられ、
ヒンズー教の主要三神と深いかかわりをもっている。
また、ビシュヌの化身ともされ、インドでは、これを切ったり傷つけたりすることは、昔から戒められてきました。
この木は、ヒンディー語で、ピーパル
ベンガル語でオショットの名で親しまれてきました。

ベンガル地方では、この木を植えるときは、バラモン僧を呼んで新しい布を供え、木の結婚式をして植えるのだそうです。
この際、インドボダイジュが、妻でベンガルボダイジュが夫となることが多いようです。
ながい年月を年月の経て大きくなったとき互いの幹が絡み合って融合してしまっているものもあります。


菩提樹と名のつく木玉

わたしたち念珠職の世界では、尊い菩提樹にあやかって多くの菩提樹が生まれたように思います。
文献から菩提樹として認められるものもありますが、さきほどのインド菩提樹以外、厳密には認められないのでありましょう。
しかし、仏説と説かれた経典がすなわちお釈迦様がすべて説かれたものとはいえない(これほど多くの仏説があるとは到底信じられません)
訳で、仏意(つまりお釈迦様ならこう考えるはずということ)も仏説と説かれたといいます。
でありますならば、〇〇菩提樹があってもあながち間違えではないのでしょう。


星月菩提樹
(セイゲツボダイジュ)
菩提樹と言えば星月菩提樹と想像されるほど、とにかく一番出まわっている菩提樹珠ではないでしょうか?







割ってみました
こんな


天竺菩提樹
(テンジクボダイジュ)
一つは持ってみたい高嶺の花のような存在だった天竺菩提樹。もちろん今でもその気運は抜けないのですが、
ひと時と較べると上の星月菩提樹ほどではないにせよトーテモ安価になり手に入りやすくなりました。
天竺を持つということは、それだけでステータスの上がるものという評価なのですね。





割ってみました


金剛菩提樹
(コンゴウボダイジュ)

ホルトノキ科ジュズボダイジュ(インドジュズノキ)の種子。インド名ルドラークシャ。
ルドラ-クシャとは、サンスクリット語で「ルドラ神(シバ神)の目」という意味です。
ヒンズー教(特にシバ派)では好んでこの種子で数珠をつくるようです。なぜならルドラ-クシャは主神シバそのものなのだそうです。
シバが非常に大切にしているものなのです。
それゆえに神聖であり縁起の良いものとされ、ただ触れるだけでも罪は魔術のように洗われてしまうし、見ただけでもたいへんなご利益があり、
不幸の兆しがある人からは、それが取り除かれると言われています。





割ってみました
ジュズ菩提樹の木


蓮華菩提樹

こよなく天国の香りを感じさせる蓮の種子

仏教と蓮は切っても切れない間柄です。
ヒンズー教にとっても聖なる植物(宇宙を生み出す扉・生命の源泉)として
崇められてきました。蓮にかかわる逸話、絵画、像にいとまがないほど用
いられてきました。

そんなところから菩提樹の仲間入りしたのでしょう。





鳳眼菩提樹  
龍眼菩提樹
虎眼菩提樹

いろいろな表情を見せる鳳眼菩提樹・竜眼菩提樹・虎眼菩提樹です。
が、もとはみんな同じ木になる種子なのです。

くわしくはこちらです。
左から鳳凰・龍眼・虎眼


日月菩提樹


太陽菩提



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